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お客さまと市場
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お客さまと市場

2020.03.19

顧客と市場は、マーケティングを
考えるうえでの2本柱といっても
過言ではありません。

お客さまのニーズを探ることが
マーケティングですが、
やはりお客さまのことは
お客さまに聞かなければわかりません。
その探り方は、これまで色々と述べてまいりました。

一方、市場を俯瞰すれば、
自社のお客さまだけでなく、
他社のお客さまが溢れています。
他社のお客さまには、本来なら、
自社のお客さまであっても
よいはずの方がたくさんいます。

そして、お客さまが真に欲しているもの、
他社に魅力を感じてしまう
お客さまの心理は、
具体的にどのようなものなのか。
それを踏まえて、
マーケティングをどのように
考えればよいのか。
以下にまとめてみたいと思います。

■創業10年で“合格点”
一般に、会社は創業してから
10年持てば合格点とされています。
そして10年持つ会社は、
全体の2、3%程度にすぎないのです。
芸能界やプロスポーツ界と同様に、
ビジネスの世界でも、
生き残り競争が極めて激しいのです。

おかげさまで、躍進は今年の1月で
創業満20年を迎えました。
これもみなさまのご支援、
ご指導の賜物と心得ております。

なぜ躍進は10年以上持ったのか。
それは、自分の口で申し上げるのも
甚だ僭越ですが、少なからず、
お客さまや市場を
理解していたからにほかなりません。
理解し、それに合う商品や
サービスを提供し続けてきたから、
全体の2、3%の枠内に残ることができたのです。

■お客さまのことはお客さまに聞こう
お客さまのニーズは、
必ずしも一つではありません。
そして、TPOによって、そのニーズも変化します。

これについても、
そのお客さまの声に素直に耳を傾け、
その心理を探らなければなりません。

ユニクロや百均などで
廉価商品を購入していながら、
時には高級ブランドショップで
高額品を買う。よくある光景です。

また、BtoBの取引においては、
同じ会社でも、その置かれている
立場によって、ニーズが違うものです。

社長の方針、購買担当者の計画、
生産現場の責任者である
工場長の立場などで、
おのずからニーズが違ってくるものです。

我々は、そうした人たちの
最大公約数的なニーズに対応し、
時には、トレードオフ(両立しない)も
覚悟に入れて、ニーズを決定しなければなりません。

■商品の価値を決めるのはやはりお客さま
お客さまの“こだわり”はどこにあるのか。
それは、やはりお客さまに確認しなければ
わからないことです。
送り手(作り手)の独断で
決めるものではないのです。

例えば、飲食を例にとっても、
単に料理の味が良いだけで、
お客さまが、押すな押すなの
行列をつくってくれるでしょうか。

やはり、お店全体の雰囲気であったり、
接客にあたるスタッフの対応であったりと、
料理以外の要素に魅力を感じて、
そのお店を利用しているはずです。

腕の良いウエイターなどは、
「ピーナツ一皿だけでもお客さまを満足させることができる」と
豪語しています。料理の味などは、
「まずくなければいい」程度に考えており、
お店を回していくうえで、
大した要素ではないのかもしれません。

住宅の場合でも、
男性と女性ではまったく“こだわり”が違います。
男性は、主に家を「モノ」として見ますので、
耐震や防蟻、防火など、その性能にこだわります。

一方、女性は、家は暮らしのステージ、
いわゆる「(いろいろな)コト」の
場所と考えますので、間取りや収納、
動線などに強い関心を示します。

もちろん女性も、
住宅の性能に関心がないわけではありません。
むしろ「性能は100点であたりまえ」ぐらいに、
思っている人がほとんどです(笑)。

こうした点を踏まえて、
住宅のご提案をしなければ、
ちぐはぐな結果になってしまうのです。

送り手(作り手)の思いというのは、
自分たちにとっての関心事にすぎないのです。
それに気づかないまま、
お客さまのニーズとかけ離れたものを提供しても、
受け入れてもらうことはできません。
買ってもらえない送り手(作り手)の思想は、
悲しい話ですが、無価値なのです。

■適正価格とは
腕の良いウエイターなどは、
「ピーナツ一皿だけでもお客さまを満足させることができる」と
豪語していると前述しましたが、
その背景には、価格に見合った適正な魅力を提供し、
お客さまのニーズに応えているということなのです。

お客さまのニーズを探るうえで、
性能、機能、デザイン、品質、価格、
サービス、人間関係、納期など、
さまざまな要素があげられます。

これらは、お客さまにとって、
最適でなければ意味がないのですが、
すべてについてバランスが求められます。

例えば、パソコンやスマホに限らず、
一般の家電製品には、いわゆる
「使わない機能」がたくさんついており、
その分、値段が高く設定されていることがよくあります。

これなどは、送り手(作り手)が考える
クオリティと、お客さまにとってのニーズの
クオリティが乖離しているわけです。

使われない高機能、過剰品質などが、
価格アップのもとになっていれば、
それはもう適正価格とはいえません。

一方、BtoBのお客さまの場合でも、
購入する(仕入れを担当する)方と、
その商品・サービスを実際に利用する方では、
魅力の感じ方も違ってきます。
購入した人にとって、
そのクオリティのスペックが価格に
見合うものであっても、
実際に利用する人にとっては、
割高に映ることもしばしばあるのです。

やはり、適正価格は、
多くの立場のひとの意見を取りまとめて
決定しなければならないのではないでしょうか。

■経済的、精神的、物理的な3つのメリットを満たすものはすべてライバル
ここで、お小遣いを含めた
可処分所得を考えてみましょう。

その「お財布の中身」を取り合うのは、
生活必需品関連業をはじめ、
飲食業、観光業、エンターテイメント関連業など、
余暇活動にあてる分野もあります。

そして、よく誤解されてしまうのが、
もし自社が求められないとしても、
必ずしも同業他社製品に流れる
わけではないということです。

牛丼の吉野家が満席だったら、
そのお客さまは必ず松屋やすき家に
いくわけではありません。
立ち食いそば屋にいくかもしれません。

また、高級フレンチレストランのライバルは、
必ずしもイタリアンや、中華、
焼き肉屋ではないのです。
「楽しい時間を過ごす」ためなら、
安い夕食で済まして
ディズニーランドに行ったほうが
効果的と考えれば、
フレンチvsディズニーランドという
構図もできあがります。

このように、お客さまは常に、
限りあるお金と時間を、
どれにどのように使うかを迷っています。

そして、お客さまが商品・サービスを
利用してくれる要素は、
経済的、精神的、物理的な
3つのメリットを満たしてくれるかどうかです。

価格が適正で、性能にすぐれ、
利用していて心地よいという満足こそが、
購入決定の決め手です。
3つのメリットを満たすものはすべてライバルなのです。

■ニーズが価値観と心得よ
言うまでもなく、
お客さまのニーズは、千差万別です。
その違いを決めているのは、価値観なのです。

つまり、マーケティングは、
対象とするお客さまの価値観を知る
ことからスタートしなければならないのです。

例えば、ある設計事務所の建築士は、
「お客さまのところに赴くときは、
必ず高級外車で乗り付ける」と言っています。

その事務所は、
特段に儲かっているわけではないのです。
事務所も地味で、
建築士さんも決して高給取りではないのです。

しかし、高級外車でやってきた自分をみて、
お客さまが「この人は、他の建築士とは
違うセンスがありそうだ。
何かやってくれるに違いない」という
イメージをもってもらうためだというのが、
その理由なのです。
その建築士さんの価値観は、
こういうものなのです。

もっとわかりやすい例でいえば、
若者たちの消費行動です。
毎日の食費をケチってまでして、
スマホやゲームにお金を費やしています。
これなどは、私には理解できない価値観です(笑)。

しかし、価値観の差や違いに鈍感であると、
マーケティングを見誤るだけでなく、
大きなビジネスチャンスを逃がすことにも
なりますので気を付けましょう。

■合理性の存在を認識し適切に対応する
しかし、価値観の差には、
お客さまにとっての合理性が
確保されているのです。
こうした合理性は、
それぞれに違う基準に基づいて
確保されるため、一見矛盾しているように
見えてしまうのです。つまり、
ダブルスタンダード、
トリプルスタンダードなどは、
当たり前なのです。

当然、この合理性は、
必ずしも送り手(作り手)の合理性と
イコールで結ばれているとは限りません。

お客さまの合理性を知るには、
「お客さまが自社の商品を
どういう基準でみているか」を
確認する必要があります。さらに、
「その基準自体を変えてもらうことが
できるかどうか」も確認する必要があります。

もし、変えていただけるのであれば、
どのように変えてもらうかを
検討しなければなりません。
変わる可能性がないのであれば、
送り手(作り手)は党対処すべきかを
検討することになります。

■差別化で生き残る
お客さまにとってなくてはならない
存在になりたいというのは、
すべての送り手(作り手)の
共通した意見であると思います。

しかし、お客さまは必ずしも
そうは思っていません。
もっと言ってしまえば、
「その会社が倒産しても、
変わりはいくらでもいる」くらいに
思っているケースが圧倒的に多いはずです。

自社が、お客さまにとって
なくてはならない存在だと思っているのは
勘違いや思い込みに過ぎないのです。

つまり、市場やお客さまが、
送り手(作り手)を必要としてのではなく、
送り手(作り手)が、市場やお客さまを
必要としているわけです。だから、
「顧客の創造」が必要になってくるのです。

これを踏まえて、マーケティングはやはり、
自社主体の発想を捨て、お客さま中心の発想に
転換するところからスタートしなければならないのです。

そして、もしお客さまに選ばれたい、
市場で生き残りたいのであれば、
差別化を実施するしかないのです。

お客さまから見て価値ある商品・
サービスを提供し続けることで、
差別化が生まれますが、それにはまず、
お客さまの声を徹底的に聞くしかないのです。

■決定権と拒否権
一般に、商品・サービスの採用に関して、
それぞれに決定権(購買担当)と
拒否権(実際に使う人)を持つ人がいます。

あるメーカーは、それを熟知しており、
実際に使用する担当者、購買担当者、
部門責任者、経営者に、
それぞれアプローチをかけ、
最終的な合意を得て、
契約に結びつけています。

誤ったアプローチとして、
よく購買担当者にばかり接触する
営業マンがいますが、
購買担当者はお金の支払いを
担うだけの人なのです。

決定権を持つ購買担当(支払担当)は、
非常にわかりやすい存在なのですが、
拒否権をもつ現場の担当者は、
わかりにくい存在でもあります。

そして、決定権者と拒否権者は、
たいていの場合、トレードオフ(両立しない)
関係になりがちです。それには、
利益やメリットを共有できる関係を
維持していくようにしなければなりません。

■市場から5W1Hで探る
マーケティングは、
お客さまらスタートするものですが、
そのお客さまが特定できない場合は、
市場や用途からスタートすればよいのです。

自社の製品を分析する場合、
基本を5W1H(もしくは6W3H)で実施します。

商品やサービス(WHAT)を、
「誰がお客さまか」(WHO)
「どの市場(どのタイミング)でつかうか」(WHEN)
「何のために買うのか」(WHY)
「どこで使うか」(WHERE)
「どのように使うか」(HOW)
という感じで分析していくのです。

■市場全体を見よう
冒頭でも述べましたが、
市場には、本来自社のお客さまで
あっていいはずなのに、
お客さまでない人たちがいます。
これを無視してはいけません。

もちろん、独占、寡占状態
に陥っている市場も存在します。
しかし、自動車業界でいっても、
首位のトヨタの市場占有率は40%程度です。

こうした状況下では、必ず変化は起こります。

いつ変化がおこっても
おかしくない市場において
、もし30%のシェアを確保しているのであれば、
その変化は自社から起こる確率が高いでしょう。

もちろん、その変化は、良い変化であるか、
悪い変化であるかはわかりません。

もし、そうでなさそうであるならば、
変化がいつどこで起こるのか、
常に観察しておかなければなりません。

つまり、お客さまを見つめるだけでなく、
常に市場全体を俯瞰していなければならないのです。

現在、自社のお客さまでない方々は、
欲しい商品・サービスが
たまたまないだけの潜在的な顧客なのです。

市場は常に変化します。

納豆は、一般的な食材市場の商品から、
万能な健康食であるという認識から、
いまや健康市場の商品になっています。

市場は、固定的に見ることなく、
生き物のように常に変化するものであると認識しましょう。

株式会社 躍進  代表取締役社長笠井輝夫

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