ノウハウを生かすマーケティングとは
2020.05.25
ビジネスにおける「ノウハウ」の意味は、
一般的に言われている単なる知識とか、
やり方、方法とは異なります。
それは狭義に解釈され、
ビジネス行為・作業に関する
具体的な技術・知識を指します。
そして、ノウハウを獲得するための早道は、実証実験です。
まず「こうしたいからこうするんだ」という仮説を立てます。
そして行動し、その結果を検証する。
その行動も「ちょっと試してみるか」という気持ちで実施し、
用いた知識が正しかったかどうかを検証・判断できます。
これによりお客さんのニーズも明確になり、
その知識に肉付けすることで、
大きなノウハウへと昇華できるのです。
ノウハウは、他人が教えてくれるものではありません。
自分で試行錯誤して掴み取るしかないものなのです。
今回は「ノウハウ」についてお話します。
■ノウハウは「強み」
ビジネスにおけるノウハウは、
その会社、個人の「強み」という
言葉に置き換えてもよいでしょう。
そして、よく誤解されることなのですが、
個人レベルにおける「強み」とは、
その人が好きなものではないのです。
好き嫌いは別にして、得意とするものなのです。
そして、企業における「強み」とは、
いわゆる成果の上がるものでなければならないのです。
厳しい言い方をすれば、成果を上げられないものは、
強みではないと言っても過言ではないでしょう。
「強み」を見つけるには、
常に「できないことは何か」ではなく
「できることは何か」と常に考えて行動することです。
そうしているうちに、思わぬ成果が上がるようになり、
自らの強みに出会うことになるのです。
「何ができるだろうか」と常に考えていると、
手持ちの時間や知識では処理できないほどの
仕事があることに気づくものです。
成果をあげるために積極的に行動することが大切です。
■お客さまに貢献できるノウハウに値打ちがある
企業や、それに属する人々は、
それぞれに様々なノウハウを持っています。
しかし、ビジネスの世界におけるノウハウは、
お客様のニーズにこたえることが出来なければ意味がありません。
もっと言ってしまえば、
お客さまのニーズを作りだすことが
できるものであるべきなのです。
それは、魅力的な商品なのかもしれません。
あるいは、他社よりもスムーズに
商品を提供できるシステムなのかもしれません。
お客さまに貢献できるノウハウというのは、
いうまでもなく市場シェア拡大を実現します。
また、新規市場を開拓することもできます。
ノウハウとは、成果に結びつく知識であるのですが、
まったく新しいことを学ぶばかりが、
ノウハウ取得とは限りません。
これまでの志向を、例えば市場志向に変えるだけで、
ノウハウに気づく場合もあります。
また、コア・コンピタンスと
サブ・コンピタンスを入れ替えることで、
ノウハウに気が付く場合があります。
例えば、ファッション業界などでは、
仮に優れた縫製技術をコア・コンピタンス
としている企業があっても、
やはりセンスが問われる業界なので、
デザインをコア・コンピタンスに置き、
縫製技術をサブ・コンピタンスに置くことで、
ノウハウに気づくこともあるのです。
■ノウハウはつねに進歩させる
ノウハウの効用は、売上や利益に如実に反映されます。
売上や利益の減少は、
そのノウハウが劣化しているサインでもあるのです。
また、スポーツの世界の記録のように、
つねにライバルに破られる危険にさらされています。
ライバルは、優れているノウハウであればあるほど、
それを盗もうとします。
だから、常に進歩し続け、
盗まれないようにしなければなりません。
進歩していないと、
一時点でどんなに差別化されたノウハウであっても、
ある時点を境に、その差はなくなってしまうのです。
進歩する手立てはいくらでもあります。
常に間断なく、成果に結びつく
正しい知識を身に着けるよう
努力することも大事ですが、前述のように、
これまでのコア・コンピタンスを
サブ・コンピタンスに変え、
まったく新しい中心的なノウハウを
確立するような方向性を維持し続けることでも良いのです。
ノウハウ確立の目標が達成されても、
お祝いなどしてはいられないのです。
その時点で、すぐに次の準備に取り掛からなければなりません。
どんな会社でも、ノウハウの進歩が
停滞することは許されないことなのです。
■常にノウハウの改善をすすめる
どんなに優れたノウハウでも、改善の余地はあります。
そもそも、完全なノウハウというものは
存在しないからです。商品やサービスだけでなく、
それを作り出す人間や会社も、不完全であり、
永遠に改善を繰り返さなければならないのです。
その不完全さは、あるべき姿、
理想の姿というものと比較することで
はっきりと見えてきます。
欠落している何かがわかるのです。
そうした作業を繰り返していくうちに、
ノウハウそのものが高まっていきます。
そうして、経営資源として、
より貴重な存在に昇華していくのです。
また、そのなかに多角化のヒントが大いに含まれているのです。
例えば、人間に使える薬は、
動植物にも使えるかもしれません。
オフィスで便利なものは、改良すれば、
学校や病院でも便利であるかもしれません。
このような視点を常に持ち続け、
より高いレベルや新しい用途という視点で、
これまでのノウハウをみることによって、
欠けているものがわかり、改善の方向性が明らかになるのです。
理想とするノウハウと、
現状のノウハウには、当然ながら差があります。
まずは、現状のノウハウを整理してみましょう。
そのキーワードは、①分けてみる、②一緒にしてみる、
③重ねてみる、④厚くしてみる、⑤薄くしてみる、
⑥順番を入れ替えてみる、⑦上下を逆にしてみる―
などがあります。
そうしているうちに、
利用できる範囲というものが広がっていくのです。
さらに、新たなノウハウを探る方法、
理想と現状の差を表しているものを探るには、
①反復する、②他社をまねる、③他社から買う―
という手段があります。
■フィードバックを実行する
強み、ノウハウを改善していくうえで
欠かせない仕組みはPDCAサイクルです。
以下に、ウィキペディアから抜粋します。
「PDCAサイクル(PDCA plan-do-check-act)は、
生産技術における品質管理などの継続的改善手法。
Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の
4段階を繰り返すことによって、業務を継続的に改善する」
「Plan(計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する。
Do(実行):計画に沿って業務を行う。
Check(評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを評価する。
Act(改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて改善をする。
この4段階を順次行って一周したら、
最後のActを次のPDCAサイクルにつなげ、
螺旋を描くように一周ごとに各段階のレベルを
向上(スパイラルアップ)させて、継続的に業務を改善する」
このように、目標→実行→結果を、
次の行動の目標にフィードバックするわけです。
これをフィードバック分析と言います。
このなかで、特に重要なのが、
「Check(評価)→ Act(改善)」です。
これにより、ノウハウの改善が実効性のあるものになるのです。
Checkの段階で、優れた仕事、
一所懸命やった仕事、粗末な仕事、
失敗した仕事を確認し、それを踏まえて、
Actにおいて、集中、改善、勉強について考えるのです。
そうすることで、次の新たな目標と同時に、
ノウハウの改善が実行されるのです。
■SWOT分析を活用する
さらにここで、
強みを生かすうえで欠かせない
「SWOT分析」を復習します。
以前にも、「SWOT分析」を説明しましたが、
改めて、以下にウィキペディアの解説を転載します。
「SWOT分析とは、目標を達成するために意思決定を
必要としている組織や個人のプロジェクトや
ベンチャービジネスなどにおいて、
外部環境や内部環境を強み (Strengths)、
弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、
脅威 (Threats) の4つのカテゴリーで要因分析し、
事業環境変化に対応した経営資源の
最適活用を図る経営戦略策定方法の一つである」
機会(O) | 脅威(T) | |
強み
(S) |
積極的攻勢戦略
|
差別化戦略 |
弱み
(W) |
段階的施策戦略
|
専守防衛または撤退戦略 |
「強み」とは、
目標標達成に貢献する組織(個人)の特質です。
「弱み」とは、
目標達成の障害となる組織(個人)の特質です。
「機会」とは、
目標達成に貢献する外部の特質です。
「脅威」とは、
目標達成の障害となる外部の特質です。
上記表の縦軸と横軸の要因を、
強みと弱みは内部要因、
機会と脅威は外部要因と2つに分類します
そして、「どのように強みを活かすか」
「どのように弱みを克服するか」
「どのように機会を利用するか」
「どのように脅威を取り除く、
または脅威から身を守るか」を検討します。
「強み」の分野に「機会」が訪れたときには、
積極的な攻めの姿勢は大事です。
文字通り「積極的攻勢戦略」をとるべきでしょう。
反対に「弱み」の分野に「脅威」が
発生してしまったときには、
「専守防衛または撤退戦略」をとるしかありません。
しかし、「強み」の分野に「脅威」が
発生してしまったときは、
その強みを生かして脅威に対抗すべく
「差別化戦略」をとります。
「弱み」の分野で「機会」が発生してしまったときは、
自社の弱点をカバーしながら機会をうかがいます。
持久戦に持ち込み少しずつ方策を講じていく
「段階的施策戦略」をとります。
何がノウハウであり、ノウハウでないのか。
そして、そのノウハウを生かすには
どうしたらよいのかを知るうえで、
「SWOT分析」は欠かせない指標と言えるかも知れません。
■強みを認識する
お客さまが、自社の商品を買ってくれるのは、
他社の競合商品よりも優れているからです。
これは、ノウハウを生かした強みが
認められているということです。
一般に、何の努力しもしないで、
ノウハウが身につくわけがありません。
我々は、努力して身につけたものを
強みと認識しますが、
努力せずにできていることを
強みとして認識することはないのです。
しかし、意外なことが分かります。
他社より上手にできていること、
「なんでこんなことが
他社にはできないのであろう」と
思っていることが、
ノウハウであることがあるのです。
取り立てて努力していないでできていることが、
ノウハウであることに気づくのです。
これを発掘し、すべての事業、
商品、人材に活用することが何よりも大事です。
■効率性を考える
一般に、効率的というのは、
コストパフォーマンスが優れているということです。
費用(コスト)に対して効果(パフォーマンス)が
大きいという意味で、
いかに素晴らしいノウハウで
お客さまに貢献したとしても、
ビジネスである限り、
正統なコストパフォーマンスが要求されるのです。
それは、企業にとって、
ノウハウは事業そのものであるという
概念があるからです。
そして、ノウハウは無限に存在するのでなく、
それを利用する以上、
適正な利益を獲得しなければならないのです。
会社は、慈善事業をやっているわけではないのです。
ノウハウの価値に見合う
売上・利益を確保してこそ、
企業活動をしたといえるのです。
■ノウハウは間接的利益を生む
ノウハウは、商品そのものだけでなく、
商品の裏側にもあるのです。
例えば、我が国独自の流通形態である問屋は、
小売業者に単に商品を卸しているだけではないのです。
情報収集機能、集荷分散機能、
品揃え機能、金融機能などを備えており、
その優劣が、小売業者に
貢献できるノウハウとなるのです。
代金は、商品そのものの対価という
形でしか現れませんが、小売業者は、
問屋の情報収集機能、集荷分散機能、
品揃え機能、金融機能を利用し、
その対価を商品代金のなかで支払っているのです。
一見すると、「サービスという意味はタダ」という、
日本人独特の認識に通じるものですが、
実際にはタダではなく、
きちんと対価が回収され、
利益を生み出すノウハウなのです。
直接的な利益でなくても良いのです。
価値を認めてもらい、それによって
売上・利益に還元できればそれでよいのです。
■ノウハウは共有すべき
一般には、ノウハウが共有できていない
ケースが多いようです。企業の場合、
それぞれの事業部や部門に、
社内ノウハウが分散したままになっており、
まったく別会社のようになっている場合があります。
さらに、モノづくりのノウハウをはじめ、
営業担当者の販売ノウハウ、
サービス業関係者の接客ノウハウなどは、
個人のノウハウとしてとどまってしまっています。
経営資源の有効活用という視点からみれば、
無駄やムラが生じているといっても過言ではないでしょう。
このような状態が、部門、工場、部課、
商品、個人単位で起こっているのです。
これは極めて問題です。
こうしたノウハウは、本来、
全員が共有しなければいけないのです。
なぜなら、ノウハウには
事業そのものであるという側面があるからです。
株式会社 躍進 代表取締役社長笠井輝夫
社長ブログ新着記事
-
森羅万象から学ぶ人生羅針盤「物と人の本当の価値を見分ける」
-
森羅万象から学ぶ人生羅針盤「好きなことで上書きする」
-
森羅万象から学ぶ人生羅針盤「持続的な実践と成長のプロセス」
-
森羅万象から学ぶ人生羅針盤「PDCAサイクルの活用
-
森羅万象から学ぶ人生羅針盤「段階的目標設定の重要性」