中小零細企業の必勝法の基本
2020.07.01
ランチェスター戦略を用いた
「中小零細企業必勝法」のポイントは、
①差別化、②一点集中、③№1の3つです。
弱者は、差別化して、一点集中して、
№1になることで生き残れるのです。
京セラ創業者の稲盛和夫氏は、
京セラを「まず西の京で1番に、続いて京都で一番に、
それから日本一、世界一になる」という夢を
、創業当時から抱いており、明確に宣言しておりました。
差別化して、一点集中して、
№1になることを、企業トップが明らかにして、
小さなところからはじめ、
コツコツと階段を上るように№1に近づいていく。
また、メジャーリーガーのイチロー選手も、
実は「一点集中」で成功した
ランチェスター戦略の実践者なのです。
言うまでもなく、イチロー選手は、
ホームランにこだわらず、
ヒットだけを狙うことで結果を出しました。
もし、彼がヒットもホームランも狙う
戦略であったなら、果たして、
球界の記録保持者になっていたでしょうか。
イチロー選手に限らず、徹底した差別化、
一点集中によって、
誰もが№1になれ、強者になれるのです。
■お客さまに選んでもらうために差別化する
厳しいビジネス環境のなかでは、
選ばれなければ生き残っていけません。
選んでくれるのは、もちろんお客さまです。
お客さまに選んでいただくためには、
他社より秀でたもの、差別化されたものが必要なのです。
差別化は、ちょっと変わっている程度では、
まったく効果がありません。
お客さまに選んでもらうには、
とことん徹底することです。
それも、誰にでもできることを、
誰にも負けないくらいに徹底することです。
誰にもできないことをやるのは、
いわゆる専門化です。
しかし、その専門化も、
凡事徹底を突き詰めた末に、
ひらめきの中から、
専門的な技術を手に入れるのです。
それは、差別化の大きな武器となります。
発明王エジソンには、
「天才は1%のひらめきと99%の汗」という名言があります。
これには、様々な解釈があるようですが、
「99%の努力の末、1%のひらめきが生まれる」が一般的であるようです。
その努力も、明確な意図を持って、
時間を区切り、範囲を絞って行うと、
差別化の大きな成果を得られるのです。
それに加えて、差別化を実践するには、
他人がやらないようなことをやる
孤独感と戦わなければなりません。
それを乗り越える精神力も、
差別化を生み出す重要な要素と言えるでしょう。
■掛け算によって生み出される差別化
差別化は、掛け算によって生み出されます。
[何を]×[どうする]=差別化なのです。
[何を]の部分には、
製品、価格、販路、販促、サービス、
エリアなどの要素があります。
一方、[どうする]の部分には、
足す、引く、パッケージの変更、
価格を下げる、流通ルートを変える、
やることを絞るなどの要素があります。
これを掛け算するのです。
条件を少しずつ変えて、
最低3つの差別化商品をつくれば、
自社の強みに磨きがかかることになります。
手間をかけて、強みに磨きをかけ続けると、
それが会社の特徴となり、差別化となるのです。
■一点集中こそ最高の成果を生む
器用貧乏という言葉があるように、
あれもこれもやろうとすると、
どれも中途半端なレベルで止まってしまい、
結局どれもうまくいかないのです。
あれもこれもではなく、
あれだけ、これだけでなければ、成果は出ません。
殊更の才能に恵まれない人でも、
あれだけ、これだけと選んで努力し続けた人のほうが、
大きな成果を得て、最後に笑うようです。
その理由が、一点集中なのです。
才能、チャンス、時間などの資源を、
絞り込んだ一点に集中させるのです。
力を分散せずに、大事なことに集中し、
最高の成果を得るのです。
■セグメントして良いことに一点集中する
「どこの」「誰に」「何を」売るかを考えるとき、
やはりエリアも、顧客も、
商品もセグメント(細分化)しなければなりません。
そして、一番売れている場所で、
一番売れている人に、
一番売れている商品を一点集中することです。
ここで言う「売れている人」は、
売る立場の営業マン、販売担当でもあり、
お金をだして買ってくれるお客さまでもあります。
企業の立場であれば、優秀な営業マン、
販売担当に一点集中し仕事をしてもらい、
ニーズの一致するお客さまにも一点集中するわけです。
優秀な才能を、
一番伸ばせる機会に投入し、成果をあげるのです。
そして、一点集中するということは、
やらないことを決断することでもあるのです。
どうしようかなと、決断を先延ばしにすることは、
決めない決断をしたことになるのです。
でも、それでは、成果につながらないことが多いのです。
意識して、やらない決断をすることが、
一点集中するうえで、非常に重要なのです。
やらない決断が非常に難しいものです。
しかし、例えば、半径クルマで
30分以上かかるエリアはやらない、
男性向け商品はやらない、
製品数をむやみに増やさない、
粗利益が30%以下の商品は扱わないなど、
明確に決めている会社は、
概して、成果をあげているようです。
■なにがなんでも№1を目指す
強者と弱者では、
その戦い方におおきな違いがあります。
前回、お話したとおり、弱者は
「ランチェスター法則」の第一法則に従うしかないのです。
その根本となるのは、戦闘力=武器効率(質)×兵力数(量)という式です。
これに対して、強者は
「ランチェスター法則」の第二法則で戦うべきでしょう。
それが、戦闘力=武器効率(質)×兵力数(量)の二乗という式に当てはまるのです。
要するに、第二法則に支配される戦いでは、
損害規模が大きくなるばかりなのです。
もちろん、第一法則に則って戦えば勝てるかというと、
そうではありません。
やはり、その段階の№1企業は、
アドバンテージ(優位性)があるのです。
ならば、2位以下の企業に
まったく勝ち目がないかという、
これもまた、そうでもないのです。
往々にして、№1企業というものは、
全国のすべての市場をとらえた場合に与えられる称号です。
その市場をセグメントすれば、
そのすべての市場で№1であることは
ないことがわかります。
つまり、セグメントした数の企業に、
№1になれるチャンスがあるのです。
弱者は、市場をセグメントして、
自社が№1になれるエリアを探し求めます。
№1になれるエリアで戦い、
その狭い場所で勝利を収めるのです。
市場をセグメントさえすれば、
№1になれるチャンスはいくらでもあるのです。
■商品や顧客対象でも№1を目指せる
もちろん、エリアのみならず、
商品、購買層(ターゲット)、
さらには販売チャネルもセグメント
(エリア限定など)して、
№1を目指すことも可能です。
前回ご説明した例では、 東京23区をエリアに、
27歳の独身女性を対象としたファッションや
生き方をコンセプトにした雑誌を、
通販オンリーで販売する市場などでは、
大企業だろうが中小零細企業だろうが、
まったく関係なしにシェア№1の地位を確保し、
強者になれるのです。
それに対して、強者は売上アップを計画して、
ターゲットを満遍なくとらえて商品開発を行ったり、
サービスを提供したりします。
広域で事業展開すれば、人件費や、
広告宣伝費もばかになりません。
これはまさに、強者のとるべき手法です。
弱者が同じことをしても、まった歯が立ちません。
対象顧客を絞れば、一定の売上確保は実現できます。
特に、ニッチ(すき間)市場で
事業展開すれば、強者をしのぐことも容易なのです。
ビッグサイズの服(2Lから8L)専門店などは、
一般のスーパーには置いていない衣料を
取り扱って成功した顕著な例です。
■徹底的に絞り込む
つまり、№1になるためには、
勝ち目のある条件、環境を選び、
徹底的に絞り込まなくてはなりません。
まず、戦う場所を決めることです。
市場の選択を間違えてしまうと、
勝てる戦にも勝てなくなってしまいます。
そして、あれこれやるのではなく、
より小さくしていきます。
自社が№1になれるものであれば、
なんでもいいのです。
狭いエリア、少ない顧客、
限られた商品など、
何でもよいので№1をつくってみましょう。
前述の「東京23区をエリアに、
27歳の独身女性を対象としたファッションや
生き方をコンセプトにした雑誌を、
通販オンリーで販売する」などのように、
徹底的に絞り込んで、№1になってみましょう。
■足下の敵をたたく
前回もご説明しましたが、
№1になる方法の一つに、
「足下の敵攻撃の原則」というものがあります。
戦う時は、自分より強い相手とは戦わないことです。
「競争目標と攻撃目標を分ける」のです。
競争目標とは、自分より上位の相手です。
仮に、戦うにしても、
戦い方は差別化(違うこと)戦略をすることです。
一方、攻撃目標とは、自分より下位の相手です。
戦い方はミート(同じこと)戦略をすることです。
自分に力がないのに、
自分より上位の№1企業相手に戦いをするのは、
余程の差別化戦略がなければ、勝つことはできません。
前回もお話しましたが、
攻撃目標(下位の相手)は、
必ず勝てる相手であるため、
あえて相手と同じ戦法で、つぶしにかかるのです。
それに対して、競争目標は、
同じ土俵に乗ったら相手の思うつぼなので、
差別化を用いて、違う戦い方を展開していくのです。
まず勝てる土俵を選び、
勝てる相手を選ぶことが肝要です。
相手との力関係を知ることが重要なのです。
特に、№1企業ともなると、
極めてしっかりした戦略をもっています。
そんな相手に戦いを挑むのではなく、
まずは弱い相手に確実に勝つことが、
最終的な勝利を手にする可能性が高くなるのです。
前回もお話したことですが、
やはり絶対に勝つということは、
決して負けないことなのです。
戦いの被害を抑えることなのです。
下記している「市場シェアにおける
シンボルとなる目標値」においても、
特にみられるのが、
「下限目標値」(26.1%)を有する企業が、
「上位目標値」(19.3%)を有する企業を
たたく構図です。まさに、
足下の敵をたたく戦略なのです。
■市場シェアにおけるシンボルとなる目標値
73.9% 上限目標値 | 独占状態になり、その地位は絶対的に安定している。ただし、いつまでも№1企業のままいられるという保証はない。 |
41.7% 安定目標値 | 地位が、圧倒的に有利な状態にあり、安定した立場を有する。この41.7%が首位独走の必要条件といえる。 |
26.1% 下限目標値 | トップの地位に立つことができる強者の最低ラインとされるシェア目標値。これ以上シェアが低下すれば、極めて不安定な状態となる。仮に、№1であっても、安定してはいない。 |
19.3% 上位目標値 | 市場における企業のシェアが拮抗していれば、上位グループに入れるシェア。 |
10.9% 影響目標値 | 市場全体に影響を与え、各企業との競合も活発化する。 |
6.8% 存在目標値 | 市場への影響力は少なく、これ以上シェアが低くなると、市場撤退も検討しなくてはならない。 |
2.8% 拠点目標値 | 存在価値はないに等しいが、市場進出の第一歩程度には認められる。 |
■強みにフォーカスして伸ばす
№1になる方法の必須条件に、
強みを伸ばすことがあげられます。
強みにフォーカスし、
伸ばしていったほうが、成果が出やすいのです。
会社であれば、自社の強みに、
ヒト、モノ、カネの経営資源を投入して、
強みを伸ばしていくのです。
ここで注意しなければならないのは、
強みよりも弱みに目を奪われないことです。
強みに一点集中することで№1になれるのです。
弱みとは、前述の「やらない決断」をする
対象と考えれば分かりやすいかもしれません。
自社の強いエリア、顧客、商品など、
「どこの」「誰に」「何を」という視点を忘れてはいけません。
例えば、半径4キロメートル(徒歩1時間以内)、
提案する商品は売れ筋のみ、
対象顧客は従業員数20人以下の中小零細企業、
というように、得意なエリア、
商品、相手に絞り込んでみましょう。
これであるほうが売れるのです。
判断や行動がシンプルに収まるからです。
これを繰り返せば、
おのずから成果が出てきて当然なのです。
■№1は確固たるブランド
米のゼネラル・エレクトリック社の
“中興の祖”として知られるジャック・ウェルチは、
1位か2位になれる事業しかやらないという、
確固たる信念がありました。
言うまでもなく、ランチェスター戦略の№1主義です。
№1の最大のメリットは、
ずばりブランド化です。
№1と認知されれば、その時点でブランドとなり、
指名買いされ、価格決定権ができて利益がでる、
地位が安定するなどの、多くのメリットは享受できます。
もし、№1でなければ、
認知されていないので商品名も覚えてもらえない、
価格は販売店やエンドユーザーに左右され利益が出ない、
地位が不安定になる、などのデメリットが予想されます。
いずれにしても、№1のメリットは、
途轍もなく大きいといえるでしょう。
株式会社 躍進 代表取締役社長笠井輝夫
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