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中小零細企業の必勝法の実践②
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中小零細企業の必勝法の実践②

2020.08.07

ランチェスター戦略の目的は、№1を目指すことです。
それは、市場シェアを上げることにほかなりません。
市場シェアが高くなれば、それだけ利益率も高くなります。

そして、質の良い情報がたくさん入ってきます。

そうなれば、次にどんな商品がヒットするか、
どんな市場に期待が持てるかといった考えも構築でき、
下位の企業に対するアドバンテージが高くなるのです。

さらに、価格付けでイニシアチブをとることができます。

№1の企業が価格を引きさげれば、
下位の企業は、右へ倣えするか、
それ以上に価格を引き下げなければならないのです。

こうして№1のブランドが確立すれば、
特段の苦労もなく、市場の勝利者となれます。
しかし、それには、徹底した差別化と
一点集中の実現が必要不可欠です。

そして、具体的な差別化、
一点集中はどのようにしたらよいのか、
今回はその点を掘り下げてみたいと思います。

■どこの、誰に、何を、という3つの視点を忘れない

営業ほど、戦略が必要な職種はないと
いっても過言ではないでしょう。
その反面、営業マンほど、
戦略を持っていない人が多いのも事実です。
気合や勘、ひらめきで数字を作り出す人も多く、
それを自慢するケースも多々あります。

繰り返しになりますが、
ランチェスター戦略における
「中小零細企業必勝法」のポイントは、
①差別化、②一点集中、③№1の3つです。

それを実践するには、
どこの、だれに、何を、つまり、エリア、
顧客、商品の各戦略の視点を忘れないことです。

それには、徹底したヒアリングの実行が有効です。

ヒアリングは、マーケティングでも、
商談でも、最も基本的なビジネススキルです。
商談の三原則といわれるHPCでも、
Hearing(聴く)は85%、
Proposal(提案する)は10%、
Closing(契約する)は5%
という配分で重要度が示されています。

■〇〇以内だけをやる

エリア戦略を練るうえで、
最も簡単で効果が高いのは、エリアの絞り込みです。

例えば、拠点(企業)から
半径〇〇分以内のエリアだけやるとし、
それ以外はやらないと決めます。

一見、どこでもいきますというほうが、
お客さまのウケが良いように思いますが、
現実には、半径〇〇分のエリア内としたほうが、
移動時間が減り、実際のサービスの
提供時間が増えるため、より効果的なのです。

これは、時間と面積の関係を
計算すれば、一目瞭然です。

半径1時間のエリアの場合、
エリア(円)の面積は3.14です。
しかし、半径2時間なら、
エリア(円)の面積は12.56で、
実に4倍となります。

円の半径が倍になれば、
πr2乗になるのと同じで、
守備範囲は2乗法則で広がっていくのです。
つまり、広げれば広げるほど
手に負えなくなるのです。

営業の成果は、訪問の量×質で決まります。
言うまでもなく、移動時間が長いと、
訪問件数、訪問時間ともに減少します。
それを取り戻そうとして、
長時間稼働をすることになり、
仕事が全般的に手薄になり、
成果に結びつかないのです。

あちこちに移動することで、
失っている労働時間は、結構多いのです。
移動時間と、訪問先での営業時間、
作業時間の実績を確認し、範囲を絞り込み、
一点集中するようにしてください。

■お客さまを限定する

過去1年間の顧客リストをつくり、
売上上位20%を占めるのは何社か、
ベスト3はどこの会社かを押さえ、
いかに重要なお客さまであるかを認識し、
その気持ちを相手にも伝え、理解してもらうようにしましょう。

それは、差別化につながるのです。

ここで、以前ご説明した
「パレートの法則」を思い出してください。

パレートの法則は、80:20の法則、
ばらつきの法則とも呼ばれ、
働きアリの法則と同じ意味合いで使用されることが多いのです。

つまり、組織全体の2割程の要人が
大部分の利益をもたらしており、
そしてその2割の要人が間引かれると、
残り8割の中の2割がまた
大部分の利益をもたらすようになるというものです。

実際には、きっちりと20%と
限定できるかどうかはわかりませんが、
傾向としては、やはり全体の2割のお客さまで、
売上全体の8割をまかなっているケースが多いようです。

時間に置き換えても、
全体の2割の時間がもたらす成果は、
全体の8割を占めることが多いようです

■やらない決断が重要

ランチェスター戦略では、上位20%の
「よいお客」「優秀な社員」
「売れ筋の商品」「有効な時間」に
一点集中することを考えてください。

そして、下位20%は、
やらない決断すべきなのです。
良いことを増やし、
悪いことを捨てる勇気が必要なのです。

一点集中するということは、
特化することであり、
やらない決断をすることなのです。

躍進は、住宅関連事業以外は、
やらない決断をしています。
仮に、飲食業に進出するチャンスがあっても、
「地域のホームドクター」としての
使命・責務を全うするには、
やはり住宅関連事業専業でなければならないのです。

絞り込みとは、いわゆる引き算です。
これはやらない、これもやらないと
引く(捨てる)作業なのです。

そこには、断捨離のスキルが必要です。

■売れ筋商品を探す

商品の絞り込みも、
前述の「パレートの法則」に従ってください。
商品全体の上位20%に当たる売れ筋商品が、
売上の80%を占めている可能性が高いのです。
まずは、いま一番売れている商品に、
一点集中して売上を伸ばしてください。

また、売上が伸びている商品にも注目しましょう。

まだ、実際の売上金額は少ないものの、
前年比、前月比で、格段に伸びている商品は、
言うまでもなく絞り込みの対象になります。

さらに、派手に売れていないが、
利益率が高い商品も見逃してはいけません。

このように、売れている、伸びている、
利益率が高い商品に絞り込んで、
一点集中を実現して、差別化を図ってください。

そして、同時に、売上下位20%の商品が、
クレームの80%を引き起こすとされていますが、
ここに特化した対応は控えるべきかもしれません。

場合によっては、断捨離の対象になることもあります。

やはり、上位20%の商品に特化して成果を出すことに、
重きをおくことが重要です。なぜなら、
より多くの成果を得ることが期待されるからです。

■会社紹介を差別化する

会社紹介をする際も、「株式会社〇〇です」だけでは弱く、
「□□に特化して、△△(業界、エリア)においては、
№1の実績があり、◎◎において他社とは違います」
という文言を加える必要性があります。

「□□に特化」で専門性をアピールします。

さらに、「△△(業界、エリア)においては、
№1の実績があり」で、信頼性を強調します。

これを踏まえ、「防水に特化して、
さいたま市内(業界、エリア)においては、
№1の実績があり、特にFRP防水において他社とは違います」
という差別化を成立させるのです。

■市場シェアの3大目標値とは

ランチェスター戦略では、
市場シェアが大きな意味を持ちます。
言うまでもなく、企業間の販売競争の優劣は、
市場シェアによって決まるのです。

市場シェアの地位によって、
自社やライバル社がどのようなポジションにあり、
今後どのような戦略を練ればよいのか、
指針を得ることができます。

市場シェアの数値には、
いくつかの節目があり、
それぞれが目標値となっています。
それが、以前にもご説明した
「市場シェアにおけるシンボルとなる目標値」です。

合計で7つありますが、
そのうちの上位3つが
「3大目標値」といわれているものです。

■市場シェアにおけるシンボルとなる目標値

73.9% 上限目標値 独占状態になり、その地位は絶対的に安定している。ただし、いつまでも№1企業のままいられるという保証はない。
41.7% 安定目標値 地位が、圧倒的に有利な状態にあり、安定した立場を有する。この41.7%が首位独走の必要条件といえる。
26.1% 下限目標値 トップの地位に立つことができる強者の最低ラインとされるシェア目標値。これ以上シェアが低下すれば、極めて不安定な状態となる。仮に、№1であっても、安定してはいない。
19.3% 上位目標値 市場における企業のシェアが拮抗していれば、上位グループに入れるシェア。
10.9% 影響目標値 市場全体に影響を与え、各企業との競合も活発化する。
6.8% 存在目標値 市場への影響力は少なく、これ以上シェアが低くなると、市場撤退も検討しなくてはならない。
2.8% 拠点目標値 存在価値はないに等しいが、市場進出の第一歩程度には認められる。

 

■ほぼ絶対安全の「上限目標値」(73.9%)

上限目標といわれる市場シェア率が73.9%です。
ここまで占めてしまえば、
ほぼ独占といっても過言ではないでしょう。

しかし、かつてのキリンビールが、
「スーパードライ」という
ヒット商品を武器としたアサヒビールに、
猛追されたケースもありますので、
けっして永遠に安定しているわけではないのです。

そして、こうした状況は、
決して健全とは言えません。
まず、業界全体が活性化しません。
さらに、№1企業のおごりから、
社内のモラル低下を招くおそれもあるのです。

■有利な立場の「安定目標値」(41.7%)

首位独走の条件となる数値です。
安全圏に入った目安でもあり、
相対的な安定値ともいわれます。

強者の立場は確保され、
上記の7つのシンボル数値のなかでも、
経営において最も重要と言えます。

前述の、上限目標値73.9%では、
あまりにもバランスを欠いているため、
間接的な弊害が生まれてきますが、
安定目標値41.7%であれば、
弱者との健全な競争が実現するので、
ひいては業界全体の底上げにつながり、
お客さまの利益にもつながるのです。

また、この数値41.7%は、
3社以上に乱戦になっている業界において、
№1と同等の意味合いがあります。

業界のトップ企業が、
新製品を売り出すときに、
シェア目標として、この数値が重要視されます。

■強者の最低条件「下限目標値」(26.1%)

強者として認められる
最低限の市場シェア率が26.1%です。

例え、業界1位であっても、
市場シェア率が26.1%未満であれば、
シェア争いは決着していないことになるのです。

その地位は極めて不安定で、
いつ下位のライバル企業に
取って代わられてもおかしくなく、
当然「強者の戦略」をとることが
有効とは限らないのです。

「強者の戦略」をとるか
「弱者の戦略」をとるかは、
まさにケースバイケースで。
慎重に判断しなければなりません。

当然、ライバル同士で
激しい戦いが繰り広げられますが、
例え、第1位であっても、
大きな利益を得ることは難しいとされます。

まさに、26.1%が強者と弱者を
分ける数値といってもいいでしょう。

■3:1の差の「射程距離理論」

また、100%から
上限目標値73.9%を引いた数値が
下限目標値の26.1%でもあり、
言い換えれば上限目標値73.9%と
下限目標値26.1%の合計が100%なのです。

そして、仮に、市場をシェア率73.9%の企業と、
26.1%の企業で争っているとしましょう。
この2つの強者と弱者の
市場シェア率は、約3:1なのです。

この2社の間で、
3倍の市場シェア率の開きがあるというのは、
おおきな意味を持っています。

以前にも、述べましたが、
敵味方の戦力比に置き換えれば、
3倍ほどの開きがあると、
勝敗が決してしまい、
逆転は極めて困難になります。

ランチェスター法則の
第一法則上では3倍、
第二法則上では1.7倍(3の平方根)
のシェア差の根拠は、
「射程距離の差が3:1なら逆転は極めて困難」ということです。

73.9%は26.1%の約3倍にあたり、
相手との力の差が3:1にまでなると、
前述のとおり、逆転は極めて困難
であるということを示しています。

この3:1の比を
「射程距離理論」
「サンイチの原理」といいます。

■「射程距離理論」には3倍以上の兵力を

高性能で知られた旧日本海軍の
零式艦上戦闘機、
通称・零戦(ゼロ戦)を攻略するため、
アメリカ軍は、対零戦用の戦術を、
ランチェスターの法則から研究開発しました。

その結果、日本軍の零戦に対して、
必ず3倍以上の航空機で対戦し、
3機で一つの編隊を組みます。
つまり、零戦1機に対して、
米軍機は3機で戦いを挑んできたのです
(厳密には4機で対抗していました)。

この戦法で、零戦は
次第に劣勢になっていくのです。

米軍は、豊富な資源、資金、工業力に
裏付けられた兵力を、
無秩序に投入したのではなく、
ランチェスター戦略に基づいて、
兵力の最適配分を割り出し、
合理的に戦ったのです。

零戦の例は、特別な例えでしたが、
やはりランチェスター戦略は、
元々は第一次世界大戦時に
編み出された戦略であるため、
兵力への応用は容易なるものだったのかもしれません。

しかし、中小零細企業は、
3倍の兵力をもって
戦うようなことはできません。

冷静に、客観的に
自分の置かれた立場を見つめ、
そのうえで、ランチェスター戦略を
実践で応用することを考えてみましょう。

株式会社 躍進  代表取締役社長笠井輝夫

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