中小零細企業の時間戦略
2020.10.20
中小零細企業の時間戦略
今回は、中小零細企業における「時間」について、お話しいたします。
リモートワークが定着化しつつありますが、やはり、基本は従来の訪問営業であることは、間違いないでしょう。
ネットを活用した様々な効率化は、今後も進んでいくと思いますが、それは必要な範囲に留められると思います。
なぜなら、中小零細企業にとって、リモートワークは、大手も積極的に実施しているため、同じ土俵に乗っては、勝負にならないからです。
やはり、リモートワーク+実際の訪問によって、時間を有効利用すべきだと思います。
特に、従来からある訪問営業の強みを生かした、中小零細企業らしい時間戦略を実行していきたいものです。
旬別分析と曜日別分析
販売実績を上げるには、「営業マンの攻撃量」にあたる、お客さまにおける滞在時間を多くすることが重要です。
そのためには、時間管理を行わなければなりませんが、重要なのは、実績に結びつかないムダな時間を極力少なくし、実績に直結する時間を多くすることが、「営業マンの攻撃量」アップにつながるのです。
それには、営業マンが日々どのように過ごしているかを調べなければなりません。期間は1カ月あれば、最低限のデータを取りそろえることができます。
さらに、曜日別の訪問回数や訪問特性も分析します。
月を営業の締め日を中心に10日ずつに分けて、行動特性を比較・分析する方法を旬別分析といいます。
一般に、営業マンは締め直後の行動が、のんびりしやすいのですが、実際には、この締め直後の行動が販売実績に多大な影響を与えるのです。
つまり、ライバル社も同じように、一息ついているときがチャンスなのです。
また、曜日別に行動特性を分析する方法は、文字通り曜日別分析といいます。
週の前半に行動量が多くなるも、後半になって息切れするタイプや、その逆もあります。
理想的なのは、平均して動けることなのですが、やはり、週の前半の月曜、火曜に意識しながら訪問回数を増やしたほうが、業績はアップします。
訪問回数を増やす
1日のなかで、お客さまのところに滞在する時間の割合を、得意先滞在時間比率といいます。
前述のように、昨今は、リモートワークも定着し、以前のように、お客さまに直にお会いする機会も減りました。
しかし、リモートワークでも、お客さまとネットで「接している時間」を、滞在時間に置き換えて考えれば、同じことです。
滞在時間を増やす方法は2つあります。
一つは、1回あたりの訪問における滞在時間を長くする方法です。
もう一つは、訪問回数を多くすることで、トータルの滞在時間を多くするというものです。
この2つを比較すると、やはり、訪問回数を多くすることが有効です。
「よく来る」(リモートワークならよくアクセスしてくる)というのは、やはり親密感を増します。
一方、「長く居る」(リモートワークでの長時間アクセスしている)のは、熱心さが伝わるものの、お客さまにとっては、余計な時間を取られたという意識だけが残ります。
もちろん、訪問回数の多い営業マンも、毎回滞在時間が短いわけではありません。多く、短く、ところどころ長くと、ここ一番には長く接して実績に結びつけています。
午前中を有効に
得意先滞在時間比率を増やし、「営業マンの攻撃量」をアップさせるには、社内業務時間と交通移動時間を見直さなくてはなりません。
1日の労働時間で、社内にいる時間の割合を、社内業務時間比率と言います。
まず、これを減らすことが重要で、20%以内にしなければなりません。
そのコツは、午前中の時間の使い方にあります。
一般的に、営業マンの、午前と午後の得意先訪問回数を比較しても、午前中は1~2件、午後は4件となります。
これは、スタート時間を1時間早めることで、解決します。
そのためには、マネージャーをはじめ、管理職、指導者は、朝礼や会議の時短の実行をしなければならないでしょう。
場合によっては、朝礼を廃止し、前日夜に夕礼を行うようにしてもよいと思います。
営業マンも、日報や書類は、前日に書き終えておくようにしましょう。
そうすることによって、午前と午後の訪問件数が、同数になるようにするのです。
会議をスムーズに
ムダな会議をなくし、時短を実行しなくてはなりません。
一番のムダな会議は、営業マンの業務報告のような会議です。
こうしたものに、1~2時間もかけるのは、極めて非合理的であるとされています。
一番よろしくないのは、月曜日の午前中に実施される会議です。
これは、営業マンにとって、極めて重要な時間帯であり、もしこの時間に無意味な会議が実施されているのであれば、即刻止めなければなりません。
事前に「何をしたいのか」「他社はどうなのか」「現状の問題点はなにか」などをチェックし、その在り方を含めて見直しながら、会議を進めていくとスムーズに進行するものです。
交通移動時間の短縮化を実現する
我が国の営業マンの平均交通移動時間は、総労働時間の30%に達しているといわれています。
滞在時間比率を、50%を目標とすれば、社内業務時間比率の20%と合わせて、100%になってしまいます。これでは、食事の時間もありません。
やはり、交通移動時間比率を、30%以下にしなくては効率の良い営業活動は実現できないことになります。
これには、営業テリトリーを限定することが重要で、支店・営業所などの拠点を中心に、半径20km以内を営業範囲として定めれば、効率はよくなり、得意先滞在時間を増やすことになります。
さらに、工夫も大事です。
まず、営業エリアの地理に詳しくならなくてはなりません。
知らず知らずのうちに遠回りしていることもあります。また、普段利用している道が工事中の場合、抜け道が利用できるようにしておかなければなりません。
次に、訪問ルートや訪問順序を検討しておくことが大事です。
その都度、帰社するような訪問方法や、行き当たりばったりの無計画な訪問では、効率性は著しく低下します。
さらに、手近なところから回ろうとすることを止めることです。遠方のお客さまに対しては、疎遠になりがちで、場合によっては、未消化のお客さまを生み出してしまいます。
合理的な訪問計画を立てる
そのためには、訪問計画を立てなければなりません。
まず、訪問計画がないと、行動にムダができて、効率が上がりません。
次に、未消化のお客さまの発生を、最小限に抑えられます。
訪問頻度、滞在時間を標準化すれば、訪問していないお客さまをなくすことができるからです。
それには、お客さまを重要度別に仕分けしなければなりません。
そして、お客さま別に、1カ月の訪問回数や1回当たりの滞在時間を決めていくのです。
もちろん、重要度の高いお客さまほど、訪問回数は増え、滞在時間も長くなります。
さらに、いたずらに件数を多く訪問するのではなく、「これだけ訪問すればよい」という目標を立てることが大事です。
そうしなければ、営業マンのやる気が起きないからです。
訪問回数、滞在時間を割り当てる
Aクラスのお客さまの数×訪問回数×滞在時間
Bクラスのお客さまの数×訪問回数×滞在時間
Cクラスのお客さまの数×訪問回数×滞在時間
この3つの式を合計すると、以下の式になります。
営業マンの数×1日平均訪問回数×稼働日数
この式に則り、例えば、営業マンの数と稼働日数を増やすことなく、現在のままで作業を続けるとしたら、1日の訪問回数を増やすだけのことになります。
販売実績を上げるには、ABC各クラスのお客さまの分類と、その組み合わせ、及び平均訪問回数、稼働日数をいかに増やすかということになります。
あるエリアの営業マンの訪問計画の立て方をみてみましょう。
1日平均訪問件数…7件
月間稼働日数…8日(他地域も担当している)
1日平均労働時間…9時間
得意先滞在時間比率…30%
お客さま数…Aクラス5店、Bクラス4店、Cクラス8店、新規開拓候補10店(新規開拓候補は月2回訪問したい)
この場合、この営業マンは、1カ月あたり56件(7件×8日)お客さまを回れる計算になります。
新規開拓候補は月2回訪問するという条件を踏まえて、以下のような計算式が成り立ちます。
Aクラス 5店×4回=20件
Bクラス 4店×2回=8件
Cクラス 8店×1回=8件
新規 10店×2回=20件
こうすることで、合計56件となり、訪問件数を決めることができます。
また、営業マンのお客さまに対する総滞在時間も、以下の公式で割り出されます。
総滞在時間=9時間×30%×8日=21.6時間=1296分
これを、総訪問件数56件で割ると、1件あたり約23分となります。
これを踏まえて、1回あたりの訪問時間を、Aクラス30分、Bクラス25分、Cクラス10分、新規20分とすれば
Aクラス 5店×4回=20件 30分×20件=600分
Bクラス 4店×2回=8件 25分×8件=200分
Cクラス 8店×1回=8件 10分×8件=80分
新規 10店×2回=20件 20分×20分=400分
合計1280分と、1296分とほぼ同じになります。
もちろん、こうしたものは、割り付け上の計算であるため、絶対的な正解ではなく、あくまで考え方を示したものです。
9つのマトリックス
前述のAクラスからCクラスへと、お客さまの優先順位を決める、その格付けの元になるのが、以前、ご説明したABC分析です。
ABC分析は、2種類あります。
取引先の取引規模ランクでみる場合と、自社のシェア分で見る場合です。
まず、お客さまを、取引高の多い順にならべ、Aグループ、Bグループ、Cグループと区分けしていきます。
次に、自社の製品だけで見たお客さまのシェアランクをabcとして、以下のようなマトリックスを成立させます。
取引高ランクA 取引高ランクB 取引高ランクC
お客さまにおける自社製品のシェアランクa
Aa
Ba
Ca
お客さまにおける自社製品のシェアランクb
Ab
Bb
Cb
お客さまにおける自社製品のシェアランクc
Ac
Bc
Cc
Aaは、取引高もAクラスで、かつ自社製品のシェアもaクラスという意味です。Baは、取引高はBクラスでも、自社製品のシェアはaクラスです。
9つの分類が多すぎるというのであれば、以下のように3つに再編することもできます。これが実際のABC分析になるのです。
Aグループ=Aa、Ab、Ba(重要顧客ランク)
Bグループ=Ac、Bb、Ca(主要貢献ランク)
Cグループ=Bc、Cb、Cc(マイナス貢献ランク)
お客さまを訪問する際も、Aグループを優先して回るようにしなければなりません。
したがって、Aグループを午前中に回って、時間も十分に割くというやり方が原則となります。
情報量も、A、B、Cの順に多く持っているものです。
訪問の標準化の重要性
訪問回数に差をつける理由の一つに、ハッピーコールの問題があります。
ハッピーコールとは、はっきりとした目的がない挨拶型の訪問です。
コールと言っても、電話をかけるという意味ばかりではありません。主に訪問です。
また、顧客の慶事(誕生日など)に、手紙を出すことも含まれます。
これは、訪問回数の多いAクラスにのみ行われるものです。
また、苦手なお客さまに対して、敬遠しがちになってしまい、いつしか、2カ月、3カ月と未訪問が続いてしまうものです。
そうこうしているうちに、ライバル社が足繁く通い、お客さまを奪取してしまうことがあります。
これをロスト顧客といいます。
ロスト顧客の原因は、やはり未訪問が一番多く、それをなくすためにも、訪問作業の標準化は重要なのです。
お客さまから情報を入手する
訪問時間をABCそれぞれのランクに分けて、長短をつけるのは、Aクラスのお客さまほど、情報を多く抱えているという点があります。
その時、営業マンは、聞き役に徹し、多くの情報を収集しなければなりません。
情報量を多く抱えているといっても、例えば、前述の同じBグループ(Ac、Bb、Ca 主要貢献ランク)のお客さまでも、Ac型のお客さまと、Ca型のお客さまでは、まったく違うのです。
確かに、自社製品のシェアは、Ac型はCa型よりも少ないかもしれませんが、売上規模でAクラスのお客さまは、情報量が多いことから、訪問を続けなければならないのです。
また、Aクラスのお客さまほど、滞在時間を長くしなければならないのは、キーマンといわれる購買関与者が多いからです。
面会しなければならない人が、Aクラスのお客さまほど数が多いのです。
こうした点を踏まえて、お客さまのランクによって、滞在時間にメリハリをつける必要があります。
これが逆だと、そのまま営業成績に反映されてしまうの
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