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森羅万象から学ぶ人生羅針「肉体が衰えると精神が充実する」
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森羅万象から学ぶ人生羅針「肉体が衰えると精神が充実する」

2023.10.24

森羅万象から学ぶ人生羅針「肉体が衰えると精神が充実する」
 前回に引き続き、壮年の生き方について述べてみたいと思います。『地獄の門』、『考える人』などの作品で知られるフランスの彫刻家オーギュスト・ロダンは、「老年は騒音から遠ざかる。沈黙と忘却に仕える」と述べています。

 この騒音というのは「よく考えたら自分にとってどうでも良いこと」と訳せば、その真意がよくわかります。例えば、俗に「飲む・打つ・買う」の三道楽などは、年齢と共に魅力が色褪(あ)せていくものです。

 お酒も弱くなり、ギャンブルで勝ってもそれほど嬉しくもなく、異性に対する興味も薄れていくことで、この3つが自分にとってどうでもいい「騒音」と気付き、自然と興味を失い遠ざかっていきます。

 また自分に対する評価も、よく言われようが悪く言われようがどうでもよくなり、ただの「騒音」にしか聞こえず達観してしまうのです。

 その半面、沈黙と忘却に接することは多くなります。若いころであれば、主張のすべてを開陳して口角泡を飛ばしながら議論を重ねることにエネルギーを費やすものですが、壮年に至れば必要最低限のこと以外を沈黙することで、相対的に自分以外の若年層の活気がみなぎっていくものです。

 さらに忘却についてですが、これは認知症になってしまうという意味ではありません。憎しみや悲しみなどの負の意識に対して積極的に忘れることで、「それはもう自分にとってどうでもいい」と納得させ、心を軽くして壮年にとって負担の少ない日常を実現できるのです。

 そうした姿を示すことは、「自分たちもいずれこうなりたい」という若者の手本になります。このように、肉体が充実している時ほど精神は未熟なものですが、肉体が衰えると精神が充実することを肝に銘じておきましょう。

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