森羅万象から学ぶ人生羅針盤「言葉を失うような出来栄え」

2024.12.23

　文芸評論家・小林秀雄氏は、「美は人を沈黙させる」と述べています。確かに私くらいの年齢になっても、テレビに出てくる女優さんがあまりにも美しいと、思わず息を呑んで沈黙してしまいます。

　また美術館を訪れ、すばらしい名画や彫刻を実際に見たときも呆然として感動してしまうこともあるでしょう。

　さらに、自然のなかの美しい風景に触れた時など、まさにその美しさが視覚だけでなく五感全体に染み渡るものです。鳥のさえずり（聴覚）、ここちよい風（触覚）、花の香り（嗅覚）、芳醇な果実の甘味（味覚）などには言葉が出ません。

　そしてこれは、我々の仕事にも言えることです。お客様の期待通り、予想通りの仕上がりで仕事が完了すればご満足いただけるはずです。しかし、そうした期待や予想をはるかに上回った仕事をした時、間違いなくお客様は感動します。

　感動した証拠として、仕上がりを見た時、3秒ほど言葉を失うからです。その後絶賛の嵐となります。そして間違いなくその方々はリピーターになってくださいます。

　そんな美を生み出すのは、小手先のテクニックではありません。すべての美には魂は込められているものです。その魂が相手の魂に共感し、美に触れた感動を呼び起こすのです。

　ものづくりに携わる人だけではありません。営業や企画など、目に見えない成果にも、言葉を失う美が隠されています。そんな美をまとった、言葉を失うような出来栄えを目指してこそ、真のビジネスマンといえましょう。