NO2・渋沢栄一の思想・今こそ求められている「‘と’の力」
2021.02.22
NO2・渋沢栄一の思想・今こそ求められている「‘と’の力」
〈渋澤〉
昔アメリカで講演した時、「渋沢栄一は未来志向を持った起業家です」と言ったら、「『論語』って秩序ですよね。秩序とイノベーションって全然違うじゃないか」みたいな質疑を受けました。その時に何を答えたのか覚えていませんが、いま答えるとすれば、渋沢栄一の考え方はあくまで「論語と算盤」なんですね。「論語か算盤」ではなくて。つまり両方を合わせた関係というのが重要だと。
〈田口〉
二者択一ではない。
〈渋澤〉
『論語と算盤』の冒頭に、
「正しい道理の富でなければその富は完全に永続することができぬ。ここにおいて論語と算盤という懸け離れたものを一致せしめることが、今日の緊要の務めと自分は考えているのである」
と書かれているように、「論語と算盤」をいまの言葉で表現すると、サステナビリティ(持続可能性)だと思っています。渋沢栄一は決してお金儲けを否定していません。ただ、その稼いだお金を独り占めすると幸福は永続しないし、算盤勘定だけではいずれ躓いてしまう。一方、お金儲けは卑しい、関心がないと言って『論語』しか読まないというのも、世の中が著しく変化する時代においてはサステナビリティに乏しい。
ですから、これはあくまでも二つ合わせた関係であり、大事なのは「〝と〟の力」だと思うのです。特にいまコロナ禍で社会の分断が進んでいる中で、見直さなきゃいけないのはやはり渋沢栄一のこの精神ですよね。
〈田口〉
大賛成です。
〈渋澤〉
AIというのはゼロかイチかという「〝か〟の力」じゃないですか。過去のデータを積み重ねた上で、その先の答えを出すと。もちろん過去の体験に学ぶことも大事ですけど、人間は先の見えない将来に向かって「これをやるんだ」とゴールを打ち立てて、そこから逆算して実現させる力も持っています。未来と現在とを繋げるということを考えると、私はこの「〝と〟の力」って人間しか持っていない大事な力だと思います。
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