森羅万象から学ぶ人生羅針盤 「不便は工夫と感謝を育てる」
2026.07.31
森羅万象から学ぶ人生羅針盤
「不便は工夫と感謝を育てる」
精神科医で作家の斎藤茂太氏は、「不便は不幸だとは限らない」と語っています。同じく、四肢欠損という大きなハンディキャップを背負いながら人生を切り拓いてきた乙武洋匡氏も、まったく同じ趣旨の言葉を残しています。
私は、この言葉に深く共感します。
なぜなら、私自身も2012年11月、脳内出血によって左半身に後遺症が残り、左腕は今も思うようには動きません。以前なら何気なくできたことが、今では時間も手間もかかります。不便なのは紛れもない事実です。
しかし、不幸かと問われれば、答えは「いいえ」です。
不便は確かにあります。しかし、その不便は工夫によって乗り越えられます。道具を変える。やり方を変える。考え方を変える。そして、ときには素直に人の力を借りる。それだけで、人生は十分に前へ進んでいけるのです。
私は家族やヘルパーさん、社員や仲間、多くの方々に支えられて今日があります。その支えを受けるたびに、「一人では生きられない」という当たり前の真理を教えられました。
もし、あの日病気にならなかったら、これほどまでに「感謝」の重みを知ることはなかったかもしれません。
そもそも「不便」とは、絶対的なものではなく、比較によって生まれる感覚です。
都会で暮らす人には車のない生活が不便かもしれません。しかし地方では、それが日常です。逆に、自然豊かな環境を都会の人は手に入れたくても簡単には得られません。
つまり、不便かどうかは環境ではなく、自分の心の物差しが決めているのです。
さらに言えば、不便には人を育てる力があります。
工夫する知恵が生まれる。
感謝する心が育つ。
人と支え合う信頼が深まる。
そして、自分一人では決して見ることのできなかった景色を見ることができます。
便利さは効率を与えてくれますが、不便さは人間力を育ててくれるのです。
人生も同じです。
順風満帆な時よりも、不自由や逆境に直面した時こそ、人は知恵を磨き、心を鍛え、背中の哲学を育てていきます。困難を理由に立ち止まるのではなく、「この状況で何ができるか」と問い続ける人だけが、新しい道を切り拓いていくのです。
「時は命なり、一日一生」。
今日という一日も、不便を嘆く一日にするのか、不便を工夫へ、工夫を成長へ、成長を幸福へ変える一日にするのか。その選択は、誰でもなく自分自身にあります。
不便は人生の敵ではありません。
工夫を生み、感謝を育み、人との絆を深めるために与えられた、人生からの贈り物なのです。
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